変わりゆく街の魅力を再発見 新・小杉散歩

2018.07.30

地域に根ざしたタルト専門店 「おやつ研究所」

武蔵小杉駅からサライ通り商店街を10分ほど歩いた住宅街に立つ、焼き菓子とタルトの専門店「おやつ研究所」。あまりわかりやすい立地とはいえませんが、お買い物中に子どもと一緒に休憩したり、ママ友さんとの憩いの場にしたり、散歩帰りに家族でゆっくり過ごしたりと、美味しいおやつや手土産を求めて、武蔵小杉界隈に暮らす人々が集まります。

通りからも目を惹く、大きな窓が目印。週末ともなるとSNSの情報をもとに、遠方からスイーツ好きが来店します。

お店を切り盛りするのは、オーナパティシエの大谷よしこさん。
ショーケースに並ぶ季節のタルトと、サブレやスコーンなどの焼き菓子すべてをおひとりでつくっています。

小さく可愛らしいタルトが所狭しと並ぶ、カウンターのショーケース。いずれも旬のフルーツを使っているため、来るたびに少しずつ違った顔ぶれが見られるのも、楽しみのひとつ。小ぶりなサイズも大谷さんのこだわりで、2つ3つと食べ比べられるよう、このサイズにしたとのこと。実際にカフェを利用するお客さんには、2種以上注文する方が多くみられます。

発酵バターを贅沢に使ったタルトは、サクサクした食感を生かすため、土台を二度焼きする。翌日でもその食感が楽しめるので、手土産として喜ばれます。

レジカウンターに並ぶ、スコーンやサブレなどの焼き菓子たち。メニューはすべて、白砂糖を使わず、きび糖や黒糖を使用しています。

数あるメニューのなかでも、特に人気が高いのが、ショーケースの一番上に並ぶ「ベイクドレアチーズケーキ」。コクがありながらも後味が軽く、いくつでも食べてしまいそうな、魔のおやつです。週末は新丸子のコーヒーショップ「SHIBA COFFEE」さんにも卸していて、あちらでも楽しみにしているお客さんが多くいらっしゃいます。

サクサクとした土台としっかりとしたクリームチーズ生地がクセになる「ベイクドレアチーズケーキ」350円。コーヒーとの相性もぴったり。

「おやつ研究所」のオープンは、2年前。奈良出身の大谷さんは、料亭で長くパティシエを務めたあと、東京のオーガニックレストランでシェフとして腕を振るいます。その後は、老舗和菓子店のカフェ部門でメニュー開発を担当するなど、さまざまな場で活躍されてきました。子どもの頃から一貫して興味を持っていたのは、おやつを作ること。仕事に夢中になりながらも、いつかは自分のお店を持ちたいという想いがあったそうです。
そんな大谷さんに大きな転機がやってきたのが、2年前。ある日の仕事帰り、自宅のある武蔵小杉駅近くの不動産屋の貼り紙を何気なく見ていたら、お店の方がとても親身になって小杉の街の特徴を教えてくれた。駅前はどこも家賃が高く、空きもあまりないことを知ると「あなたの場合、駅前にこだわらず、住宅街でもよいのでは?」というアドバイスをもらいます。そこからひと月以上たったある日、突然勤務中にそのお店から「あなたにとても良い空き物件があるから、今日にでもいらっしゃい」と、電話が入る。仕事を終えてすぐに内見し、直感で「ここだ!」と思った大谷さんは、昼間にもう一度来て、大きな窓から陽が差す光景を見て、すぐに契約したといいます。
しかし、当時は会社員。突然決めたため、開店準備も何もなく、会社もすぐに辞めるわけにはいきません。とはいえ、家賃も無駄にできない。「開店の1か月前まで会社で働き、仕事の後に開店準備を進めました。何もかもがギリギリで、外観の準備なんて、開店2日前にできたんですよ」。

時間がないながらも、できることは自分でやった。こちらのテーブルは、古いものをネットで購入して、自分で削り上げたとのこと!

宣伝をする余裕もなく、オープンしても人が来てくれるのかすらわからないという、無謀ともいえる大谷さんの挑戦。それなのに、オープン当日は何故かお店の前に数人の列ができていました。
「開店の準備をそれとなく見ていた通りがかりの近所の方が来てくれたり、大家さんが口コミで宣伝してくれたり…。また、初日に来てくれたお客さんのなかに、お菓子教室を営んでいる方がいて、その人がSNSにアップしてくれたこともきっかけとなって、たくさんの方が口コミで来てくれるようになりました」

「小杉の人には本当によくしていただいて、お客さんたちの好みや意見などを参考にして、新しいメニューを考えていくようになりました。それでどんどんメニューが増えていったんです(笑)」

最初はスパイスを組み合わせた個性的なタルトが多かったものの、お店にやってくるお客さんの層に合わせて子どもから大人まで楽しめるよう、果物をふんだんに使ったものが徐々に増えていったそう。
いまでもお客さんとの会話のなかからヒントを得たり、お客さんのおすすめの食材を使ってみるなど、お店に並ぶおやつは日々変わっていきます。

「すもものタルト」330円。キュッとしたすももの酸味がハマる美味しさ。

毎年内容が変わる夏季限定のパフェ。今年は「木苺とサクサクショコラのパフェ 水出し香りの紅茶付き」1,280円。甘酸っぱい木苺のコンポートと硬めのアイス、軽やかな食感のチョコレートにクランブルと、色々な食感が楽しめる。

現在はあんこに興味があるという大谷さん。近いうちにあんこを使ったおやつがショーケースに並ぶかも!?

「たくさん作っても、お客さんにとってはひとつ。だから気を抜かずに、目の前のものに集中し、ひとつひとつこなしていたらこうなったんです。」

一躍、武蔵小杉の人気パティスリーとなった「おやつ研究所」ですが、大谷さんの言葉にあるように、お話を聞けば聞くほど、まじめな「おやつ研究」の積み重ねが現在に至っていることがわかります。
将来の夢をたずねてみたら「海の見える一軒家で、ゆったりとサロンやお店をやってみたい」とのこと。夢は公言すれば必ず実現するという大谷さん。その活躍に期待しつつ、少しでも長く武蔵小杉にいてほしいと願うばかりです。

おやつ研究所
川崎市中原区今井西町15-23 グランドール2
TEL : 044-387-7803
営業時間 : 12:00~18:30、土11:00~18:30、日・祝11:00~17:00 ※9月中旬以降は変更予定
休業日 : 月・不定
公式Instagram : @tarte_gateau

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