新小杉開発株式会社

新・小杉散歩

2018.07.20

かこさとしのひみつ展

現在、川崎市市民ミュージアムでは、「かこさとしのひみつ展 -だるまちゃんとさがしにいこう-」が開催されています。

この企画展は、同ミュージアムにて1年前から企画されていたもの。着々と準備が進められていた今年の5月2日に、かこさんが逝去され、はからずも回顧展となってしまったとのこと。

「だるまちゃん」シリーズや『からすのパンやさん』など、親しみやすく愛嬌あふれるキャラクターもたいへん有名です。また、工学博士でもあるかこさんは、科学にまつわる絵本も数多く手がけられています。誰もが子ども時代に一度は読んだことがある、かこさとしさんの絵本ですが、じつはその作品の原点は川崎にありました。
本展は、かこさんの少年時代から晩年の作品までをわかりやすく解説するほか、「見る」「知る」「学ぶ」「食べる」という観点から、かこさんの作品をひも解きます。200点以上もの下絵、スケッチ、複製原画を展示する、過去最大規模の企画展です。

かこさんの作品をより理解するためのひみつのキーワード「見る」「知る」「学ぶ」「食べる」のコーナー。それぞれのブースに関連する作品が展示されています

福井県で生まれ、7歳の時に東京・板橋に移り住んだかこさんは、絵を描くことに興味を持ちながらも、軍人になるために勉強や肉体を鍛えることに励む軍国少年でした。その後、東京帝国大学(現・東京大学)工学部応用化学科に進んだ年に終戦を迎え、自分の考えが間違っていたことに気づき、大きなショックを受けます。またこの時、大人たちの戦争に対する意見ががらりと変わったことに失望し、生きる目標を見失いました。やがて大学を卒業し、会社勤務の傍ら、住居のあった川崎市のセツルメント活動(地域住民の生活向上のための社会事業、およびその施設)に参加します。そこで、子どもたちに絵の描き方を教えていくうちに、これからは子どもたちの役に立つことをしたいという考えが強くなり、この活動に情熱を注ぐようになります。

「川崎セツルメント子どもの会」の子どもたちの作品も、大切に保管されていました。工場などで夜通し働く父親を持つ子どもたちは、家で遊ぶことができないため、「子どもの会」の活動が活発だったようです。

ユーモラスなストーリーと、斬新なデザイン『どろぼうがっこう』(1973年・偕成社刊)。川崎セツルメントで披露した紙芝居が原案。子どもたちがみな夢中になって喜んでいた経験から、ストーリーづくりに重きをおくようになったようです。/『どろぼうがっこう』偕成社刊 ©1973,Satoshi KAKO

『どろぼうがっこう』全ページの原画の複製を展示したコーナー。文章がなく、絵だけの展示のため、絵本とはまた違った視点で楽しむことができる。

そのうちに、子どもに絵を教えるからには、自分も絵画や美術の勉強をしなければと思うようになったかこさんは、本格的に絵を学びはじめ、昭和34年、33歳のときに『だむのおじさんたち』で、絵本作家としてデビューします。それから「だるまちゃん」シリーズや『どろぼうがっこう』、『からすのパンやさん』、科学絵本など、50年にわたり600点もの著作を世に出します。

子どもたちが困難を乗り越えながら成長していく過程を、だるまのキャラクターで描いた「だるまちゃん」シリーズの展示コーナー。表情豊かなだるまちゃんの姿に、引き込まれるように鑑賞する方がたくさんいらっしゃいました。

2006年に出版された『だるまちゃんとてんじんちゃん』の下絵。愛用していた画材とともに展示されています。

科学絵本のなかの1作『たべもののたび』。かこさんの科学の絵本は、断面図や解体図などを用いて、緻密ながらもわかりやすく解説し、子どもたちの生活にかかわるところまでを描いています。/『たべもののたび』童心社刊

1973年に発表された『からすのパンやさん』にはじまる「からすのおみせやさん」シリーズの展示コーナー。このシリーズでは、社会で生きていくために、家族みんなで力を合わせながら働いていく姿が描かれています。

時代を問わず子どもたちの心をつかむ、パンの焼きあがりのシーン。ミュージアムショップには、パン柄のTシャツなども販売していました。(売り切れ次第販売終了)/『からすのパンやさん』偕成社刊 ©1973,Satoshi KAKO

展示の最後には、2018年1月に発表された作品とともに、かこさんが最後まで筆をとり、未来に生きる子どもたちに伝えていきたかった想いを表す言葉で締めくくられています。

かこさんの作品が一堂に会した、今回の企画展。大人も子どもも夢中になって楽しめ、あっという間に時間が過ぎてしまいます。夏休みにぜひご家族で鑑賞してみてはいかがでしょうか。

「かこさとしのひみつ展 -だるまちゃんとさがしにいこう-」
会期 : 開催中~9月9日(日)
休館日 : 毎週月曜日
開館時間 : 9:30~17:00(最終入場 16:30 まで)
*夏休み期間の土曜日(7 月 21・28 日、8 月 4・11・18 日)は 19:00 まで開館(最終入場 18:30 まで)
観覧料 : 一般600円、65歳以上・大学生・高校生450円、中学生以下は無料。
※展示室の撮影はできませんので、ご了承ください。
川崎市市民ミュージアム

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