新小杉開発株式会社

新・小杉散歩

2021.04.27

川崎市平和館川崎大空襲記録展『戦時下の市民生活と川崎大空襲』

平和公園内にある「川崎市平和館」にて、現在「川崎市平和館川崎大空襲記録展『戦時下の市民生活と川崎大空襲』」が開催されています。

1945(昭和20)年4月15日に死者約1,000人、負傷者約15,000人の被害を出した川崎大空襲の記録を中心に戦争に関する資料が多く展示される「川崎大空襲展」。この催しは川崎大空襲の日であり平和館の開館日でもある4月15日を中心として、毎年広く市民の皆様に戦争の悲惨さを伝えるとともに、平和に対する理解を深めることを目的に開催されています。
会場にはテーマが決められた資料や写真などが貼られたボードが展示される他、出征兵士のぼり旗や焼夷弾などの物品資料も多く展示されています。

会場奥より撮影。入り口から順に戦時下の生活や戦争の全景、空襲による地域の被害、そして終戦後の川崎、復興への取り組み、と見ていくことができる。写真奥は「故郷に帰った半鐘展」、右は今回の特別企画である「写真週報から見る市民生活」のコーナー。

会場入口側より撮影。写真奥は「明治大学平和教育登戸研究所資料館 特別展示 勤務していた少女が残した記録」と「公文書館所蔵資料にみる川崎と戦争〜記録と記憶〜」

「米軍による空襲」のボードのところでは米軍の「Tactical Mission REPORT」が和訳されているものも展示されていた。

平和館周辺今昔のボードでは、戦前から戦後そして現在の様子が展示されていた。

最奥「小杉・丸子地域の被災のようす」に記載されている空襲被災者の証言はあまりに生々しく胸が痛んだ。

教育勅語 乃木将軍謹書・白紙(未婚女性に出社命令を出したもの)・勤労動員隊員証。他にも物品資料が多く展示されている。

この「川崎市大空襲展」は、前述したように毎年開催されているものですが、今回は例年と違う点がふたつあります。
ひとつは静岡市の鉄工所で供出品の半鐘が発見されたということで「故郷に帰った半鐘展」が一角で開催されていることこです。

「故郷に帰った半鐘展」。

発見された半鐘には「武州橘樹郡河崎領」と刻まれてあり、その後の調査の結果「遍照寺」のものであることが判明した。

ペンキのようなもので「30kg」と書かれていることで金属供出されたものだということがわかる。

もうひとつ、例年とは違う試みとして、今回の展示では戦時下の市民生活にスポットを当て、「写真週報から見る戦時の市民生活」と題して、プロパガンダに利用されたもの、国民服や食事など、当時の日常がうかがえる貴重な資料が展示されています。

1938〜1945年、365号まで、内閣情報部により政府の広報宣伝政策の一環として刊行されていた官製週刊グラフ雑誌「写真週報」。

当時のレコードと「三国旗かざして 日独伊三国同盟の歌」(1940(昭和40)年、コロムビアレコード)の歌詞。この他にも前出の「写真週報」に掲載された「廃棄すべき敵性レコード一覧」など、文化がいかにプロパガンダとされたのかが分かる資料が展示されている。

衣料に関する指導等の資料と国民服、配給切符。国民服に使用するボタンは、最初金属だったものが後に陶製になったという。

戦時中の食事例や農園に対する手引き書など。食や農業に関しても厳しく統制された。

様々な国債券。多く残っているのはもちろん終戦後ただの紙くずと化したからだ。

従軍するともらえたという従軍記章と軍隊手帳。記章がもらえたのは開戦当初のうちだけだったそうだ。

幼年すごろく。よく見ると「上り」のコマには東アジアやオーストラリアが桜で埋め尽くされているイラストが。玩具までもがプロパガンダにされていた。

婦人向け雑誌「主婦の友」付録のすごろく。下の説明書きには「(略)私たちは皇紀二千六百年の佳き年を奉慶申し上げると共に、日本を今日あらしめた私たちの祖先の数々の功績を偲び、興奮興起して更に御奉公の誠を致さねばなりません。(略)」とある。

また、この他にも会場奥では「明治大学平和教育登戸研究所資料館 特別展示 勤務していた少女が残した記録」と「公文書館所蔵資料にみる川崎と戦争〜記録と記憶〜」の展示もされていました。

「明治大学平和教育登戸研究所資料館 特別展示 勤務していた少女が残した記録」展示の一部。

「公文書館所蔵資料にみる川崎と戦争〜記録と記憶〜」では「川崎空襲展」の歴史を見ることができる。

1972(昭和47)年頃の川崎空襲展の会場内配置図。

この「川崎市平和館川崎大空襲記録展『戦時下の市民生活と川崎大空襲』」は、5月5日まで開催されています。(4月23日現在情報)
戦時、とくに空襲の話は暗く辛い話ではありますが、それを乗り越え街を復興させた人々の強さに勇気と希望をもらうことができる話でもあります。また、今回のテーマである市民生活に密着した展示を見て、個人の思考の脆弱さを知ることで、あらゆる事象に対して思慮深い態度がとれるようになるのではないでしょうか。
そういった意味でも、ひとりでも多くの方の来館を願わずにはいらない催しでした。

川崎市平和館
川崎市中原区木月住吉町33-1

川崎市平和館の常設展についてはこちらの記事をご覧ください。
川崎市平和館と平和公園を訪ねて
※館内の撮影には許可が必要です。詳しくは平和館へお問い合わせください。

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